近年、パソコンのハイスペック化やスマホで手軽にできる生放送(配信)が普及し、特に有名人でなくとも、多数の人を集める配信が増えています。
また、ニコニコ動画で人気となり、現在ではYouTubeを主流に大流行している「歌ってみた」や「ゲーム実況」も、気軽に始めることができるようになってきました。
配信サイト一つとっても、ツイキャスやYouTube Live、ニコ生、Openrec、などなど、他にもさまざまな方法で生放送をして視聴者とコミュニケーションをとることができます。人気配信者、YouTuberになりたいという人も、当然増えてきています。
そんな、YouTuberや配信者、ゲーム実況者たちを悩ませるのが、環境です。機材はお金をかければすぐにでも調達できます。しかし、大声を出していい環境は、すぐには手に入りません。
歌・動画収録や生放送・配信の悩みを解決してくれるのが、今回紹介する賃貸でも設置できる簡易防音室です。
楽器も弾けるハイクオリティ防音室は敷居が高い
<© Yamaha Music Japan Co., Ltd. and Yamaha Corporation>
(引用:YAMAHA)
ちゃんとした防音室というのは、なかなかお目にかかることができません。
というのも、賃貸の検索サイトで防音室の物件を調べても、検索にHITするのはただの鉄筋コンクリートのマンションだったりします。楽器可と書いてある部屋も、正確には防音室ではなく、ただ壁が厚いだけのマンションであることがざらにあります。
明確に防音室と言えるような部屋というのは、それこそスタジオなんかに行かなければお目にかかることはできません。
しかし、一軒家(場合によって賃貸の1階も)であれば、単体遮音性能Dr-50のハイクオリティな防音室すら導入することが可能です。
(引用:防音対策.com)
- 自分好みに防音室を作れる自由設計(オーダータイプ)
- 約1畳~5畳ほどの組み立て式防音室の定型タイプ(ユニット)
大別するとこの2種類に分かれ、一番安い0.8畳の定型タイプ(ユニット)でもYAMAHAだと58万円、カワイのナサールだと45万円程します(税別)。
高価な上、賃貸であればまず導入できる可能性は低いでしょう。1階に住んでいる人はかろうじて設置できる可能性がありますが、不動産(大家さん)に相談したり、手間がかかりすぎます。
また、トランペットのような楽器演奏者や、ピアノ奏者であれば大きさや音量の都合でこういった防音室を用意する必要があるかもしれませんが、歌・ゲームやYouTubeの動画収録やツイキャス・YouTube Liveでの生放送・配信であれば、これほど大掛かりな防音室はあまり必要ありません。
もちろん、お金とできる環境があるならば、こちらの方が快適に使用することは間違いありませんが、次に紹介する3つの簡易防音室も、候補に入れてみてはいかがでしょうか。
実況・生放送の騒音解消オススメ簡易防音室TOP3
1位 ライトルーム
チャックでパーツを組み立てていくもので、扉もチャックです。
オススメはライトルームプラスLL。
おすすめ度 | |
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遮音性能 | Dr-15(プラスは遮音性能UP) |
サイズ | S:0.64畳(W105×D105) L:0.83畳(W105×D120) LL:1.0畳(W120×D135) |
価格 | 約10万~18万 |
2位 だんぼっち
楽器用には作られておらず、元から歌・配信・実況用として作られているため、「音」というより「声」を遮断するという機能に特化しています。
だんぼっちは簡易防音室の中でも得に安価で、人気が高いです。
公式では90dbが60dbになると記載されておりますが、レビューや使用者のコメントを見ると、30Drの効果はないのではないかと疑問が浮かびます。
また、注意点として、「音が反響してしまう」ということが挙げられます。
しかし、ダンボール、つまりは平面なので、自分でカスタマイズしやすいのがメリットです。遮音・吸音シートなどと合わせることで価格以上の性能を発揮することができます。
おすすめ度 | |
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遮音性能 | Dr-30(疑問あり) |
サイズ | だんぼっち(内寸:W74×D104×H148) だんぼっちワイド(内寸:W104×D104×H148) だんぼっちグランデ(内寸:W104×D104×H192) |
価格 | 約8万~13万 |
3位 VERY-Q(ベリーク)
自宅でも使用できる簡易防音室セットのVQ910 Vocal Booth Set及びVQP/HQP960 Booth Setは、それぞれDr-18、Dr-30。
また防音室ではなく、吸音パネルを使用するという方法も、視野に入れてもいいかもしれません。
安価なサイズがそれぞれ1サイズしかなく、立ちながら収録をする大きさなので、扉を閉めてPCを置くのは厳しいと思います。
ただし、「歌ってみた」などの立ちながら収録できるものに関しては、ずば抜けておすすめしたい防音室です。
楽天で宮地楽器が販売しています。(宮地楽器はVERY-Qのメーカーです。)
おすすめ度 | |
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遮音性能 | VQ910 Vocal Booth Set:18dB VQP/HQP960 Booth Set:30dB |
サイズ | VQ910 Vocal Booth Set:W910×D910×H1800 VQP/HQP960 Booth Set:W910×D910×H2030 |
価格 | VQ910 Vocal Booth Set:約14万 VQP/HQP960 Booth Set:約24万 |
簡易吸音室 ライトルーム 詳細情報
ライトルームはインフィストデザイン(Infist Design)の販売する簡易吸音室です。
サイズ | S:0.64畳(W105×D105) L:0.83畳(W105×D120) LL:1.0畳(W120×D135) |
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遮音性能 | Dr-15 プラスは遮音性能UP |
価格 | 約10万~18万 |
重さ(梱包時) | (ライトルーム) S:26kg L:30kg LL:34kg (ライトルームプラス) S:27.5kg L:31.5kg LL:35.5kg |
こちらは実際の音の聞こえ方です。
また、個人の方でレビューをされている方もいます。
https://www.youtube.com/watch?v=tq_9hzLN2IY
「簡易吸音室」の名前の通り「吸音」するのを目的としています。
遮音ではないため、あまり音を遮る効果はない=Dr-15程度の遮音性能ということになります。
見た目がオシャレで部屋に置いてもあまり嫌な気分がしないのがメリットとして挙げられます。また、3サイズが丁度良い大きさで揃えられているので、S,L,LLで目的に合ったサイズを選択できます。
机やモニターを入れるのであれば、LLを選択するのが良いと思います。
<© 2018 infistDesign co.,Ltd>
(引用:http://infistlightroom.com/?pid=92798953)
ライトルームは窓が付いており、中は薄暗いものの、照明を持っていなくてもある程度の明るさが取り入れられます。しかし、ライトルームプラスではこの窓がなくなり、遮音性能に特化しています。
また、ライトルームは下に床がありません。そのため、遮音性を上げるには床には自分で用意した防音材を使用する必要があります。あまりこだわらないのであれば、毛布などでも遮音性はUPします。吸音のマットだと効果が上がります。
2人以上のお住まいだと移動もできると思いますが、一人で持ち運ぶのは骨が折れます。また、組み立ても可能な限り2人で行うようにしてください。
ライトルームは遮音性能が特別高いわけではありません。また、だんぼっち並みに安いわけでもありません。しかし、丁度いいのです。広さも、遮音性能も、価格も、ゲーム実況の収録や配信・生放送、歌など、声を出すための防音室としては非常に合っている製品です。
組立式 簡易防音室 だんぼっち 詳細情報
株式会社VIBEが販売するのは、「組立式 簡易防音室 だんぼっち」です。
サイズ | だんぼっち(内寸:W74×D104×H148) だんぼっちワイド(内寸:W104×D104×H148) だんぼっちグランデ(内寸:W104×D104×H192) |
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遮音性能 | Dr-30(疑問あり) |
価格 | 約8万~13万 |
重さ | だんぼっち:25.54kg だんぼっちワイド:30.16kg だんぼっちグランデ:35.52kg |
だんぼっちは、名前の通りダンボールでできている防音室です。
この防音室は通常のサイズだと高さがなく、立つことはできません。高さが欲しい人は「だんぼっちグランデ」を選択してください。(だんぼっちトールは販売を終了しています。)
高さがないのはデメリットではありますが、部屋の見た目をすっきりさせるというメリットもあります。
だんぼっちはメリットとデメリットがはっきりしている製品です。
【メリット】
・安価である
・最初から机ついている
・カスタマイズがしやすい
【デメリット】
・反響する
・水や湿気に弱い
・床がの強度が弱い
この製品は、「カスタマイズする」というのがほぼ前提です。
だんぼっちの中に椅子を入れるとしても床に吸音マットを敷いて強度を補強したり、反響を抑えるために壁に吸音シートを貼ったり、そのような工夫が必要です。
逆に言えば、自分好みにカスタマイズできるということです。素材がダンボールなのでカスタマイズがしやすく、また、防音材を使用すれば、価格以上の遮音性能を発揮してくれます。
ライトルームは「吸音」ですが、こちらは「遮音」です。吸音は音を吸って小さくするという意味で、遮音は音を反射して遮るという意味です。
「防音」を効率よく行うためには、遮音材の上に吸音材を乗せるのが一般的です。だんぼっちは遮音ができているため、後は吸音材を中に設置してあげるだけで、効率の良い「防音」をすることができるのです。
VERY-Q(ベリーク) 詳細情報
VERY-Q(ベリーク)のVQ910 Vocal Booth SetとVQP/HQP960 Booth Set。
サイズ | (外寸)VQ910 Vocal Booth Set:W910×D910×H1800 (外寸)VQP/HQP960 Booth Set:W960×D960×H2030 |
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遮音性能 | VQ910 Vocal Booth Set:18dB VQP/HQP960 Booth Set:30dB |
価格 | VQ910 Vocal Booth Set:約14万 VQP/HQP960 Booth Set:26万 |
重さ | VQ910 Vocal Booth Set:約44kg VQP/HQP960 Booth Set:約71kg |
ライトルーム、だんぼっちとは一線を画すのがVERY-Q(ベリーク)です。
YAMAHAやカワイの本格的な防音室を作る余裕はないけどしっかりとした製品が欲しい、また、お金はあるけど賃貸のため設置できないという人に強くおすすめします。
VQ910 Vocal Booth SetとVQP/HQP960 Booth Setでは値段がかなり変わっていますが、遮音性能を見れば差は歴然です。
VQ910は「吸音ブース」であり、防音より吸音で音を綺麗に収録する用途で使用されます。しかし、ライトルームより遮音性もあります。
HQP960は「吸音ブース」としてだけでなく、防音室としてしっかりと機能するDr-30です。
この製品は、ただ音を外に漏らさないというために使用されるのではなく、プロの現場でも使用される、「吸音」の性能に優れた製品です。そのため、音がかなり綺麗に収録できます。
当然、音を綺麗に撮るための製品なので、実況や生放送用には作られていません。そのため、扉を閉めると座るスペースを確保することはできません。立って収録する歌やセリフ読みなどに限定されてしまいますが、立ちながらできるのであれば、上の2製品よりこちらを強くオススメします。
遮音レベル(Dr)と騒音レベル(dB)の参考
遮音レベル(Dr)
日本建築学会編 / 建築物の遮音性能基準と設計指針
遮音性能 | D-65 | D-60 | D-55 | D-50 | D-45 | D-40 | D-35 | D-30 | D-25 | D-20 | D-15 |
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ピアノ、ステレオなどの大きい音 | 通常では 聞こえない | ほとんど 聞こえない | かすかに 聞こえる | 小さく 聞こえる | かなり 聞こえる | 曲がはっきり 分かる | よく 聞こえる | 大変よく 聞こえる | うるさい | かなり うるさい | 大変 うるさい |
(引用:防音対策.com)
これを見てわかる通り、たとえDr-50、Dr-40だとしても、完全に遮音できるわけではありません。
上で挙げた3つの防音室の単体遮音性能はDr-40よりも性能は低く、完全に音を聞こえなくするなんてことはできません。この認識を誤ると、「防音室を買っても意味がなかった」「失敗した」という結果につながります。
あくまで簡易的な防音室であり、「音をある程度小さくする」ことが目的です。
では、実際どれだけの効果があるのかというのは、次の騒音レベルを見て考えてみましょう。
騒音レベル(dB)
【一般的な騒音レベル】
騒音レベル[dB] | 音の大きさのめやす | ||
極めてうるさい | 90 | 大声・犬の鳴き声・大声による独唱・騒々しい工場内 | 極めてうるさい |
80 | 地下鉄の車内(窓を開けたとき)・ピアノの音 聴力障害の限界 | ||
うるさい | 70 | 掃除機・騒々しい街頭・キータイプの音 | うるさい |
60 | 普通の会話・チャイム・時速40キロで走る自動車の内部 | ||
普通 | 50 | エアコンの室外機・静かな事務所 | 日常生活で望ましい範囲 |
40 | 静かな住宅地・深夜の市内・図書館 | ||
静か | 30 | ささやき声・深夜の郊外 | 静か |
20 | ささやき・木の葉のふれあう音 |
<日本建築学会編 / 建築物の遮音性能基準と設計指針>
ゲーム実況やYouTube動画の収録、ツイキャスやYouTube Liveの配信・生放送での騒音というのは、せいぜい60~70dB程度でしょう。歌はもっと大きくなるかもしれません。もちろん人によって異なりますし、奇声や大声を上げるタイプの人はもっと大きめに見積もる必要があります。
これが15dB、30dB下がるとどうなるか。
70dB:掃除機・騒々しい街頭・キータイプの音
から、
15Dr⇒55dB:普通の会話・チャイム・時速40キロで走る自動車の内部
~エアコンの室外機・静かな事務所
30Dr⇒40dB:静かな住宅地・深夜の市内・図書館
このようになります。
さらに、今回紹介した防音室というのは、部屋の中にさらに部屋を作るものです。
当然、アパートであれマンションであれ、厚さの差こそあれど壁がありますよね。その壁によってさらに遮音されるわけですから、15Dr程度でも大きな差が感じられることでしょう。
具体的には、お隣の生活音や会話がどれだけ聞こえるかを気にしてみましょう。
通常の会話(60dB)が聞こえるなら、少し大き目な声(仮に75dBだとする)の人はDr-15で60dBになったとしても、騒音対策は不十分であり、Dr-30などもっと遮音性能の高い防音室を用意する必要があると言えます。
ただし、普通に会話する程度の声量で配信・生放送をしている人であれば、普通の会話(60dB)がDr-15で45dBとなり、静かな住宅地~静かな事務所程度の騒音レベルとなるため、隣の部屋に聞こえる可能性は低い、もしくは限りなく小さな声になると考えられます。